所有権保存登記とは?わかりやすく簡単に解説。申請の流れや費用も

所有権保存登記

不動産登記にはさまざまな種類がありますが「難しそう」と感じられる方も多いと思います。しかし、自分の不動産を守るためには不動産登記が必要です。所有権保存登記もその一つです。所有権保存登記について、それがどのような登記なのか、また、申請の流れや費用などもわかりやすくお話ししていきましょう。

所有権保存登記とは

土地や家など不動産を取得したら、不動産登記を行います。不動産登記とは、その不動産がどこにあり、広さや構造はどのようなものか、そして、その不動産を所有しているのは誰かといった情報を公の帳簿(登記簿)に記録することです。登記することで不動産に関する情報が公に明確になります。

マイホームの取得に際し必要になる不動産登記には、建物の「表題登記」、「所有権保存登記」、「所有権移転登記」、「抵当権設定登記・抵当権抹消登記」があります。なんだか難しそうな名前が並びましたが、わかりやすく言えば次のようになります。

建物の表題登記…家の構造や広さなど、建物の物理的な状況を公にする登記です。
所有権保存登記…新築した家の所有者が誰かを公にする登記です。
所有権移転登記…例えば、中古の家を購入した場合に必要になる登記です。不動産の所有所有権が変わったときに行う登記です。
抵当権設定登記…住宅ローンを借りるときに行う登記です。
抵当権抹消登記…住宅ローンを完済したときに抵当権を抹消する登記です。

所有権保存登記が必要なケース

例えば、Aさんが念願のマイホームを新築したとしましょう。Aさんは非常に嬉しいでしょう。しかし、「この家は私のもの!」とAさんが他の人(第三者)に主張するためには所有権保存登記を行う必要があります。

民法177条に「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない」とあります。

「不動産に関する物権の得喪」の「得」をAさんの例で言えば、Aさんが家を新築してマイホームを手にしたということです。また、「第三者に対抗する」とは、Aさんが「この家は私のもの!」と他の人(第三者)に法的権利を以て主張することです。つまり、が「できない」のは登記をしないからで、登記を行っていれば自分の所有権を誰にでも主張できるわけです。

所有権保存登記をすることで初めて念願のマイホームの所有者がAさんであることが公に明確になり、対抗要件を備えることになるのです。マイホームを新築したら、自分の権利を保全するために所有権保存登記が必要です

所有権保存登記の記載内容の見方

不動産登記の申請先は、その不動産の所在地を管轄する法務局です。登記した情報は登記事項証明書(登記簿謄本)で確認できます。登記事項証明書には、必要事項が整理されて記載されています。その見方を見てみましょう。

登記事項証明書は「表題部」と「権利部」に分かれています。最初に「表題部」があり、次に「権利部」。そして、権利部は「権利部(甲区)」と「権利部(乙区)」に区分されています

最初にある「表題部」には、建物の所在、家屋番号、種類(居宅、店舗、共同住宅など)、構造(木造、鉄筋コンクリート造など)、また、床面積など建物の物理的な状況が記載されます。これは上にあげた不動産登記のうち、建物の「表題登記」を行うことで記録されるものです。

表題登記は、まだ登記されていない建物について初めて行う登記です。家を新築した、という場合、その家はまだ登記されていないわけですから表題登記を行う必要があります。
建物の表題登記は法律で義務付けられています。

さて、表題部の下にある「権利部」には、対象となる不動産の権利関係が記載されます。
まず「権利部(甲区)」には、所有者は誰で、いつ、どのような原因で所有権を取得したかなど「所有者に関する事項」が記載されます。Aさんの例でいえば、所有者であるAさんの氏名、住所、どのような原因で所有権を取得したかについては「新築」と記録され、原因日付は、建物の所有権権利を取得した日になります。

「権利部(甲区)」の下にある「権利部(乙区)」には、「所有権以外に関する事項」が記載されます。「所有権以外に関する事項」とは、例えば住宅ローンを組んだ場合の抵当権などです。Aさんが、その建物を担保として住宅ローンを借りたとすれば、Aさんが借りた住宅ローンの金額やローンの利息、債務者としてAさんの住所・氏名、と抵当権者としてAさんが住宅ローンを借りた金融機関の住所、金融機関名などが記載されます。

所有権移転登記との違い

ところで、マイホームの取得は、Aさんのように家を新築するばかりではなく、中古物件を購入するというケースも少なくありません。Bさんが立地や価格など希望にあった中古の家を購入したとしましょう。この場合も、購入した家について、Bさんが「この家は私のもの!」と他の人(第三者)に法的権利を主張するための登記が必要になります。それが「所有権移転登記」です。

所有権保存登記も所有権移転登記も同じく所有権に関する登記ですが、所有権移転登記は不動産(土地や家など)の所有者が変わったときに行う登記です。Bさんが購入した中古物件にはすでにその家の所有者がいて、売買によって所有者がBさんに変わったわけですから、Bさんは所有権移転登記を申請し、所有権が自分に移ったことを明確にする必要があるわけです。

つまり、中古の家の売買のように不動産の所有者が変わったときに必要になるのが所有権移転登記、そして、新築の家のようにこれまで所有者がなく当然ながら所有権の登記がない不動産について初めて行う登記が所有権保存登記です。

所有権保存登記しないとどうなる?

所有権保存登記は、建物の表題登記と違い法律で義務付けられてはいません。しかし、所有権保存登記をしないことには多くのデメリットがあります。

権利を主張できない

所有権保存登記をしないと、先ほどもお話ししたとおり「この家は私のもの!」と他の人(第三者)に法的に権利を主張できません。これは大きなデメリットです。

家を売却できない

例えば、Cさんが自己資金のみで家を新築したとしましょう。その後、その家を売却してまとまったお金を得る必要ができたとします。しかし、Cさんが所有権保存登記をしていない場合、家の売却は非常に難しくなります。というのも所有権保存登記をしていないため、家の所有者が確定されていないからです。

家を担保に融資が受けられない

では、Cさんが家を担保に金融機関から融資を受けようとした場合はどうでしょう。相談を受けた金融機関はCさんの家に抵当権を設定しようとします。しかし、金融機関が抵当権を設定するためには、所有権の登記がなされていなければなりません。ところがCさんの家は所有権保存登記がなされていません。これでは家を担保に金融機関から融資を受けることはできません。所有権保存登記がない家を担保に融資は受けられないのです。住宅ローンを借りる際、金融機関が家に抵当権を設定するのが条件になるのと同じです

相続時に問題が生じる

所有権保存登記をしないうちに所有者が亡くなった場合、所有権などの権利関係が明確ではないため、多くの問題が生じることが考えられます

所有権保存登記の必要書類

所有権保存登記を申請する際に必要になる書類を見ていきましょう。一般的には必要書類は次の4点になります。
ご参考)自分でする場合の基本書類は、住民票だけです

  • 住民票
  • 住宅家屋証明書 *条件あり
  • 所有権保存登記申請書
  • 委任状 *申請行為を委任する場合

住民票

建物条第登記の申請人の住民票の写しです。複数いる場合は、全員の住民票の写しが必要です。ただ、一つの住民票に所有権者全員の名前が記載されているのであれば、1通で大丈夫です。

住宅用家屋証明書

所有権保存登記は、条件を満たす家屋であれば住宅用家屋証明書を登記申請の際に提出することで支払う登録免許税が軽減されます。

所有権保存登記の登録免許税は「不動産価額×0.4%」です。
不動産価額を3000万円とすれば、登録免許税は「3000万円×0.4%=12万円」。

しかし、所有権保存登記の申請の際、住宅用家屋証明書を一緒に提出すると登録免許税の税率が「0.15%」に軽減されます。すると登録免許税は「3000万円×0.15%=4万5000円」です。

ただ、住宅用家屋証明書の交付を受けるには、一定の条件を満たしている必要があります。
主な条件は次のとおりです。
・個人が自己の居住用のために新築または取得したものであること
・住宅面積が家屋の床面積の90%を超えること
・新築後または取得後1年以内に登記を受けるものであること
・床面積が登記簿上50平方メートル以上であること
・マンションの場合は、耐火建築物・準耐火建築物・低層集合住宅のいずれかに該当する
 こと
この他の条件については市区町村役場のホームページなどで確認して下さい。一般的な新築家屋であれば、ほぼ条件を満たしていると考えていいでしょう。

住宅用家屋証明は対象となる家がある市区町村の役所で取得できます。その際、必要になる書類は、市町村役場により異なりますが
・住宅用家屋証明申請書
・申請者本人の住民票の写し
・登記事項証明書
・建築確認済証
・家屋未使用証明書(未使用の場合)
などです。必要書類は市区町村役場のホームページなどに掲載されていますので、こちらについても事前に確認しましょう。

所有権保存登記申請書

法務局に登記を申請する書類です。A4の用紙に登記の目的や(ここでは当然、目的は「所有権保存」になります)、申請人の住所・氏名、不動産の所在、家屋番号、床面積などを記載します。

不動産の登記申請は、建物表題登記以外一般的には司法書士に依頼しますが、自分で作成することもできます。法務局のホームページからテンプレートや記載例をダウンロードできますから、記載例に沿って必要事項を記入します。

委任状

司法書士または第三者に登記申請を委任する場合に必要になります。自分で申請する場合、委任状は必要ありません。

所有権保存登記の費用

所有権保存登記にかかる費用で大きいのは上で紹介した登録免許税です。また、登記申請を司法書士に依頼する場合は料金がかかります。料金は各司法書士によって異なりますが、一般的な住宅の場合、2~5万円が目安になるでしょう。

また、住民票の写しなど必要書類にも費用が発生します。地域により費用がことなりますが住民票の写しは300円~、住宅用家屋証明書は1000~円です。申請に必要な書類の取得まで司法書士に依頼する場合、料金はもう少しかかります

所有権保存登記申請の流れ

所有権保存登記の申請は、「①必要書類を集める」→「②登記申請書を作成する」→「③法務局に提出」という流れになります

申請先は家の所在地を管轄する法務局ですが、法務局に出向いて申請することもできますし、郵送でも可能です。いずれにしても申請前に必要書類、申請書に不備がないかよく確認することが大切です。不備があると手続きが遅れたり、場合によっては補正が入ることになります。申請後、登記完了までは1週間程度かかります。

なお、所有権保存登記は、建物の表題登記をすませた後で行います。表題登記によって所有権の対象となる建物の物理的な状況等を確定したうえで、所有権保存登記を行うわけです。所有権を保存したいといっても、その対象が確定していなければ、登記手続の進めようがないからです。建物の表題登記、そして、所有権保存登記という順序になります。

先に、表題登記は法律で義務付けられている、とい話ししましたが、不動産登記法第47条には、新築した建物について「建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から一月以内に、表題登記を申請しなければならない」と定められています。また、「申請をすべき義務がある者がその申請を怠ったときは、十万円以下の過料に処する」という罰則も設けられています。

まとめ

所有権保存登記について、どのような登記であり、なぜ必要か、また、もし所有権保存登記をしないとどうなるか、費用や申請の流れなどについてお話ししてきました。マイホームを新築したら、所有権保存登記を行う必要があります。所有権保存登記を行うことで、家の所有者があなたであることが公に明確になります。

また、所有権保存登記は、建物の表題登記をすませた後で行います。表題登記→所有権保存登記の順序を変えることはできません。表題登記に関する専門家は、司法書士ではなく、土地家屋調査士になります

一般的に不動産の登記は専門家に依頼するものと思われていますが、実は専門家に依頼せず自分で登記申請する方も少なくありません。そのためのサポートサービスもあります。登記申請を自分ですることで「節約したい」方はインターネットで「建物登記支援センター」と検索して、専門家への依頼料と比較してください。
自分で登記申請できるための支援サービスが紹介されています。

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