表題登記と保存登記の違いとは?手続きの流れ、同時にできる方法はあるの?

建物表題登記

建物を新築したときに、まずしなければならないのは、建物の「表題登記」です。そして、その建物の所有権を明確にするためには、建物の「保存登記」が必要になります。いずれも大切な登記です。建物の表題登記と保存登記の違い、手続きの流れについて見ていくことにしましょう。

不動産の登記事項証明書について

土地や建物などを取得した際には、その不動産を登記する必要があります。手続きはその土地や建物の所在地を管轄する法務局で行います。登記された情報を記録したものが不動産の「登記簿」、そして、その写しが登記簿謄本です。登記簿謄本の「謄」の字は「写す」という意味です。

ただ登記簿謄本は紙で作成・保管されていた登記記録のコピーです。現在は、登記記録はコンピュータによってデータ管理されており、コンピュータのデータから証明書を発行するため、「登記事項証明書」と呼ぶようになっています。名称は違いますが内容は同じです。ここでは以下、「登記事項証明書」と記載します。

不動産の登記事項証明書は、土地、建物、建物(区分所有)の3種類があります。「表題部」「権利部(甲区)」「権利部(乙区)」の3部で構成され、例えば住宅ローンで土地付き一戸建てを購入したという場合には「共同担保目録」も記載されて、合わせて4部構成になります

表題登記と保存登記について

では、表題登記と保存登記について見ていきましょう。

表題登記とは

表題登記とは、新たに不動産が生じたときに土地や建物を登記することです。家を新築した場合、それは「新たに」生じた不動産ですから、その登記が必要になり、これを「建物表題登記」と言います。

建物の表題登記をすると登記事項証明書の「表題部」に、家の所在・地番・家屋番号・種類・構造・床面積などが記載されます。建物の表題登記は、その建物の物理的な状況を公的に登録するものです。

土地の場合は、「土地表題登記」になります。ただし「新たに」生じた土地とは、例えば海や川の埋め立てによって生じた土地、あるいは、水路・道路など国有地の払い下げによるものが該当しますので、土地表題登記が必要になるケースはあまりありません。そのため、「表題登記」といえば、一般的に建物の表題登記を指します(以下「表題登記」と記載します)。

表題登記は、家を新築した際に最初にすべきことです。表題登記には法的な所有者への義務があり、必ず申請しなければなりません

不動産登記法第47条に「新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から一月以内に、表題登記を申請しなければならない」と定められています。

申請を怠った場合、同じく不動産登記法第164条に「十万円以下の過料に処する」とされていますので、注意する必要があります。

保存登記とは

保存登記を略さずにいえば「所有権保存登記」です。建物表題登記の完了後、その建物の所有権を法的に明確にするための登記です(以下、「保存登記」と記載します)。

さきに登記事項証明書には、「表題部」「権利部(甲区)」「権利部(乙区)」があることをお話しましたが、保存登記は「権利部(甲区)」に記載されます。保存登記は、新築した建物の「所有者が誰か」を明確に記録しておくための登記です。

実は、表題登記においても、登記事項証明書の「表題部」に所有者の氏名が記載されます。ただ、それはその建物をはじめに建てた人の氏名を示すもので、保存登記をして初めて、第三者に対し「この建物は私のもの」と主張できる、いいかえれば対抗力を持つことになります

表題登記は、第三者に対し権利を主張する前提となるものであり、保存登記をすることで初めて所有者の権利を保全することができるのです。

不動産において登記は非常に大切です。例えば、A氏が所有する土地と建物をB氏に売却したとします。B氏はお金を払い、「これで念願のマイホームを手に入れた。この土地と家は自分のもの」と思っています。しかし、その後、A氏は同じ土地と家をC氏にも売っていました。つまり、二重売買です。

さて、ここでB氏が登記しないうちに、C氏が先に登記していたとしたら、どうなるでしょう。このケースの場合、所有権移転登記ですが、図にすると次のようになります。

二重売買が明らかになったとき、B氏は「お金も払ったし、この土地と家は私のもの。しかも先に買ったのは私だ」と主張するでしょう。しかし、C氏も「いや、私もお金を払ったし、この土地と家は私のものだ」と主張します。ここで重要になるのが民法です。

民法177条には「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない」と定められています。

この条文の「不動産に関する物権」とは、このケースでは所有権を指します。そして、「第三者に対抗することができない」の「第三者」は、B氏にとってはC氏になります。

A氏とB氏は「当事者」であり、B氏にとってC氏が「第三者」です。さて、その第三者であるC氏に「対抗することができない」とは、つまりB氏は、C氏に対し所有権を主張できないということです。

なぜならB氏は登記を備えていないからです。つまり不動産登記は、自らの権利を守るために非常に大切なのです(なお、B氏は、A氏に対し損害賠償を請求することはできます)。

表題登記と保存登記の違い

表題登記と保存登記の違いの一つは、表題登記は法律で義務付けられており、必ず登記申請しなければならないのに対し、保存登記には法律上の義務はないということです。この点が表題登記と保存登記の大きな違いの一つです。

表題登記と保存登記には、手続きにも違いがあります。第三者に登記手続きを委任する場合、表題登記は土地家屋調査士によって登記してもらいます。そして、保存登記は司法書士に登記してもらうことになります。土地家屋調査士とは国家資格の一つであり、不動産の調査、測量とともに登記事項証明書の「表題部」の登記に関する専門家です。そして、「権利部」に関する専門家が司法書士です。

表題登記と保存登記の費用

建物の表題登記、保存登記の委任費用を見てみましょう。

表題登記の費用

まず、表題登記ですが、建物は物件ごとに大きさも構造も違いますから、費用について一概にいうことはできません。土地家屋調査士によっても料金設定が異なっていますし、また、地域によっても違います。一応の目安としては、新築一戸建ての表題登記を依頼した場合、11万円~15万円程度を見ておくのが実際的でしょう

保存登記の費用

新築建物の保存登記を司法書士に依頼した場合の費用は、これも物件や地域によって、また司法書士によって異なります。一応の目安として4万~5万円程度は見ておくとよいでしょう

ただ、保存登記には登録免許税が課されます。保存登記の費用を考える際は、この登録免許税も頭に入れておきましょう。登録免許税の計算式は次のようになります。

登録免許税=課税価格(固定資産税評価額)×税率

登録免許税は、登記の種類に応じて税率が決められており、住宅用の建物を新築したときの所有権保存登記は0.4%の税率が課せられます。税額の計算式は、

登録免許税=課税価格(固定資産税評価額)×税率0.4%

しかし、新築建物の場合、「課税価格(固定資産税評価額)」が決定していないため、各管轄法務局が定めた「新築建物課税標準価額認定基準表(課税標準価格表)」をもとに課税価格を算出します。建物の種類や構造ごとに1平方メートルあたりの単価が示されていますから、これによって課税価格を算出し、それに税率をかけるわけです。

課税価格=管轄法務局が定めた「課税標準価格表」×床面積
登録免許税=課税価格×税率0.4%

なお、新築住宅の場合は登録免許税の軽減措置があり、令和6年(2024年)3月31までの取得については、税率が本則税率0.4%に対し特例税率0.15%となっています。ただ、これには要件を満たす必要があります。主な要件は、

  • 申請者が主として居住の用に供する家屋であること
  • 住宅の新築または引渡しから1年以内に登記をすること
  • 床面積が50㎡以上であること
  • 市町村が発行する住宅用家屋証明書を取得していること

特例税率0.15%は、住宅用家屋証明書を提出した場合の軽減措置で、新築でも提出しなければ0.4%です。また、認定長期優良住宅および認定低炭素住宅については、認定通知書を提出した場合、税率0.1%になります。

表題登記と保存登記の流れ

表題登記、保存登記を第三者に委任する場合の流れを見てみましょう。

表題登記の流れ

まず、表題登記の流れです。

(1)土地家屋調査士に委任
土地家屋調査士に表題登記を依頼します。住民票、印鑑証明書が必要です。 

(2)資料調査
資料調査では、登記に必要なさまざまな書類の調査・取得が主になります。
中でも重要なのは、建築確認書(確認通知書)です。また、土地や建物の位置情報を示す公図、地積測量図、建物の図面、平面図などの資料も必要です。

(3)現地調査
資料調査で収集した各種の書類や図面をもとに、現地で土地や建物の調査・測量を行い、資料調査で収集した各種データとの照合・精査を行います。申請書に添付する写真撮影も行います。

(4)申請書類の作成
現地調査、収集資料をもとに登記申請書(建物表題登記)や図面を作成します。

図面とは、建物図面、各階平面図のことですが、この図面の作成は不動産登記規則に則ったものでなければなりません。例えば、「建物図面及び各階平面図(これらのものが書面である場合に限る。)は、〇・二ミリメートル以下の細線により、図形を鮮明に表示しなければならない」、あるいは、建物図面は「五百分の一の縮尺により作成しなければならない」、各階平面図は「二百五十分の一の縮尺により作成しなければならない」など図面作成の仕方が細かく指定されています。

(5)申請
書類申請の場合は、必要書類を揃え、表題登記申請書類を管轄法務局登記所へ提出します。そして、問題がなければ登記済の押印があり、登記申請書の写しを受け取ります。
 

保存登記の流れ

次に、保存登記の流れを見ていきましょう。

(1)司法書士に委任
司法書士に保存登記を依頼します。住民票、印鑑証明書が必要です。 
登記申請書に不動産の内容を記入するため、登記事項証明書の表題部内容が必要となりますが、基本的には司法書士が登記事項証明書を取得して記入します。

(2)書類作成
司法書士が登記申請書(所有権保存)を作成します。
登録免許税の軽減措置を受ける場合は、住宅用家屋証明書や認定住宅証明書が必要になります。

(3)申請
必要書類を揃え、所有権保存登記申請書類を管轄法務局登記所へ提出します。

表題登記と保存登記を同時に申請はできない
ところで、表題登記、保存登記はともに大切な登記ですが、この2つを同時に申請することはできるでしょうか。答えは「できない」です。表題登記がない建物に、所有権保存登記はできません。表題登記が完了してから、保存登記をします。

なお、表題登記は土地家屋調査士に委任せず、自分ですることもできます。住宅ローンで建物を新築する際は、抵当権設定登記をする必要があり、金融機関が指定する司法書士が行うことが多いようですが、保存登記も自己申請できます。

表題登記を自分でしようとするときに最初に悩むのは、登記に必要な「各階平面図/建物図面」の作成だと思います。また、どのような書類を揃えればいいか不安にもなるでしょう。
そうした際、登記に必要な申請書類や各階平面図/建物図面などをあらかた作成、準備してくれるサービスを利用すれば、悩まずに簡単に建物登記が自己申請できます。インターネットで「住Myの建物登記自己申請」で検索してみてください。依頼費用と自身の少しの作業は必要ですが、専門家に依頼するよりも登記費用を大幅に節約することができます。

まとめ

建物の表題登記と保存登記についてお話ししてきました。建物の表題登記は家の新築など、新たに不動産が生じたときに必ずしなければならない登記です。一方、法律で義務付けられてはいませんが、自分の所有権を明確にし、第三者に所有権を主張するためには建物の保存登記が必要になります。そして、一般的には、表題登記は土地家屋調査士、保存登記は司法書士に依頼します。

表題登記も保存登記も自分ですることができます。自己申請を支援するサービスを利用し、自分で申請すれば、費用を大幅に節約できます。実は未登記建物は全国に多くあり、問題になっています。そのため、表題登記の自己申請について法務局は歓迎しています。

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