相続登記の費用相場はいくら?安くする方法、譲渡所得など計算方法も

未登記建物・相続登記

相続登記は、不動産の所有者が亡くなった際に不動産の所有権の変更を行う手続きです。

相続登記は2024年4月から義務化されることになっているため、相続登記について相続人となる方は知っておかなければいけません。そこで本記事では、相続登記における費用相場を解説します。

相続登記費用の計算方法や、相続登記における譲渡所得や取得費との関係についてもご紹介します。

また、本記事で解説する内容は主に「遺産分割協議後の相続登記」です。


相続登記の費用相場とは?

相続登記にかかる費用相場は相続する不動産の登記状態や評価額にもよります。

ここでは、「未登記の場合」と「登記済みの場合」に分けて解説します。

未登記の場合

遺産分割協議書作成後の登記手続きには「建物表題登記」と「所有権保存登記」の2つが必要です。

この2つの登記はかかる費用も手続きも異なります。それぞれ解説します。

建物表題登記

登記簿の「表題部」に分類され、建物の所在・構造・床面積など「どこにどのような建物が存在しているか」を法務局に記録する不動産の登記簿を作成するために必要な最初の手続きです。

登記されていない建物がなぜ存在しているのか?というと、融資を受ける場合は登記簿が必要ですが、融資を受けない方はその必要がありません。そのまま現在に至り未登記建物が存在する理由の一つとなっています。

建物表題登記を自分で行う場合は2,000円程度で済みますが、土地家屋調査士に依頼すると建物形状等により異なりますが相場としては8-15万円程度の報酬が発生します

ただし、この額は新築の場合であって古い建物の場合は、図面がないなどの状況に応じて費用が高くなる傾向にあります。

自分で行う場合の出費は、必要書類を集めるための費用のみで済みますが、その必要書類を集める時間や労力が惜しいと思う場合は土地家屋調査士に依頼します。

なぜ、司法書士ではなく土地家屋調査士に依頼するかというと、不動産の登記簿にある「表題部」の代理申請ができる専門家は土地家屋調査士だからです。

所有権保存登記

建物表題登記が終わったら、次は所有権保存登記の手続きです。

所有権保存登記とは、登記簿の「権利部(甲区)」に分類され、最初の所有権者を法務局に記録する手続きになります。

所有権保存登記は自分で行うことも可能ですが、「権利部」の代理申請ができる専門家は司法書士になります。

新築の場合の依頼費用は3~5万円程度が報酬相場になり、相続登記の場合は必要書類取得に関する費用が加算されます

依頼した場合の所有権保存登記にかかる主な出費は以下の通りです。

・司法書士への報酬と経費

・書類の収集費用

・登録免許税 等

登記済の場合

建物表題登記だけ済んでいる場合

この場合は、所有権保存登記の手続きが必要になります。相続登記の場合、相続人が手続きをします。

所有権保存登記まで済んでいる場合

この場合は、所有権移転登記の手続きになります。

所有権移転登記とは、「権利部(甲区)」に登記されている所有権者を変更する手続きです。

一般的な中古の一戸建てを購入したときなどがこれに該当します。

所有権移転登記は自分で行うことも可能ですが、司法書士に依頼すると3〜10万円程度が報酬相場です

ただし、相続人が多い場合はその手間に応じて費用は高額になります。

その他の出費は、登録免許税、戸籍謄本など必要書類を収集するための費用、法務局への交通費などです。

相続登記の費用計算方法

権利部を変更する登記に課せられる「登録免許税」の額を、自分で登記する場合は自分で計算します。

登録免許税の納付方法は額面によって変わりますが、金融機関を通じてか収入印紙、キャッシュレスいずれかの決済方法でおこないます

以下の計算方法に基づいて算出します。

登録免許税額の計算方法

固定資産税評価額を調べる

登録免許税額は以下のような式で算出します。

登録免許税額=固定資産税評価額×税率

まずは「固定資産税評価額」を調べなくてはいけませんが、これは以下のいずれかの書類で確認ができます。

固定資産税課税明細書(固定資産税・都市計画税課税明細書)

毎年4月から6月頃に届く「固定資産税納税通知書(固定資産税・都市計画税納税通知書)」に同封されています。「価格」の欄に記載されている金額が評価額です。

固定資産評価証明書

固定資産税課税対象となる不動産の評価額を証明する書類のことで、閲覧や取得は不動産管轄市町村役場でできます。

固定資産課税台帳

固定資産税課税対象となる不動産の、所有者、住所、価格が記載された台帳です。閲覧や取得は不動産管轄市町村役場でできます。

自治体により価格は異なりますが、各証明書は1物件300円程度で取得できます

不動産の評価額を合算する

例えば、次のように土地や建物など不動産が複数ある場合は、全不動産の固定資産税評価額の合計を出しましょう。

対象固定資産税
建物1500万円
土地2000万円
土地500万1,111円

この場合、合算金額4,000万1,111円が登録免許税の対象となる評価額になります。

評価額から1,000円未満を切り捨て課税標準額の計算をする

固定資産税評価額を計算したら、その金額から1,000円未満の端数を切り捨てます。

4,000万1,111円から端数を切り捨てた4,000万1,000円が課税評価額です。

「課税評価額×税率0.4%」で計算する *但し、遺贈など相続内容により税率は異なります

相続登記の登録免許税額は「課税評価額×税率0.4%」で算出します

先ほどの課税評価額4,000万1,000円に税率0.4%を掛けると「16万4円」です。

この金額から100円未満の端数を切り捨てます。

16万4円から端数を切り捨てた16万円が登録免許税額です。

相続登記における譲渡所得と費用の関係

譲渡所得とは、土地や建物などの資産を譲渡するときに発生する所得です

相続や贈与によって取得した不動産を売却すると譲渡所得が発生します。相続や贈与によって取得した不動産の売却には、前所有者の取得費等を引き継ぐことができ譲渡所得より差し引くことができるため相続登記と譲渡所得には関連があります。

ただし、事業に関する譲渡による所得は、譲渡所得にはなりません。

譲渡所得は以下の計算式によって導かれます。

課税譲渡所得金額 = 収入金額  -(取得費+譲渡費用)- 特別控除額

譲渡所得から取得費などを差し引くことが出来ますが、含めずに計算すると払わなくてもよい税金を払うことになります。

そのため、取得費は事前に計算しておかなくてはいけません

「取得費」とは、不動産を取得したときにかかった費用のことです。

取得費には、主に以下のものが該当します。

・土地代

・建物代

・建築代

・設備費

・測量費

※建物の場合、建物の購入代金などの合計額から所有期間中の減価償却費相当額を差し引いた金額が取得費となります。

そのほかで取得費に含まれるものとして、前所有者の土地や建物を購入したときに納めた登録免許税などの税金や借主がいる場合はその立退料や登記費用が挙げられ、これらの費用は譲渡所得から差し引くことができます。 

そのため、相続登記と譲渡所得は関連し合っていることがわかります。

*短期、長期譲渡所得税率、特別控除額については割愛します

相続登記を弁護士や司法書士へ依頼した場合の費用

相続登記を弁護士や司法書士に依頼した場合の費用を比較していきます。

弁護士への依頼費用

相続登記を弁護士に依頼した場合の費用は、相続内容や弁護士によって異なりますので一律にいくらと言えるものではありません。

これは相続に関する弁護士費用の内訳と目安です。

項目内容費用相場
相談料遺産相続についての相談費用30分5,000円程度
着手金遺産分割協議や調停の依頼費用20〜30万円程度
報酬金遺産分割協議が解決したときに発生する報酬得られた利益に応じて変動
実費郵便切手代、印紙代、交通費などの費用目的によって変動
日当弁護士が出張したときに支払う費用1日出張につき5万円程度

この中でも、相続における主な弁護士費用は「着手金」と「報酬金」です。

現在は、弁護士費用額は自由化されていますが、今でも日本弁護士連合会が昔に規定していた基準を参考にしている弁護士事務所は多く、相場の目安とされています

その旧規定である「経済的利益」の額3,000万円以上3億円以下を基準にした場合、着手金は「3%+69万円」、報酬金は「6%+138万円」という計算方法になり、200万円は超えてしまうことになります。

そのため、経済的利益額によっては弁護士費用が高額になることを念頭に置いておきましょう。

相続登記において弁護士ができること

相続登記において弁護士ができることは以下のとおりです。

  • 相続人の調査
  • 相続財産の調査
  • 遺産分割協議の調整
  • 遺産分割調停・審判の代理
  • 遺産分割協議書の作成
  • 遺留分侵害額請求

弁護士はトラブル解決の専門家です。

遺産分割協議、調停、審判など相続人同士のトラブル解決を法的にも解決できるのは弁護士の強みで、これは司法書士にはできないことです。

相続トラブルになったときや、発展しそうになったときは弁護士に相談・依頼することをおすすめいたします

弁護士に依頼するデメリット

相続登記を弁護士に依頼するデメリットは、費用が司法書士に比べて一般的に高いことです。

ただし報酬規程は弁護士・司法書士事務所により異なるため、依頼内容によっては必ずしも弁護士の方が高いという訳ではないことも考慮しておきましょう

司法書士への依頼費用

相続登記を司法書士に依頼した場合は、司法書士により費用が異なりまた報酬の自由化により一律ではありませんが弁護士費用に比べて安く5〜15万円の費用で済みます。

一般的には、相続人の数や不動産の個数で報酬が増減するパターンが多いです。

また、戸籍謄本の収集や遺産分割協議書の書類作成も依頼するかどうかでも報酬額が変化しますので、検討しておきましょう。

相続登記において司法書士ができること

相続登記において司法書士ができることは以下のとおりです。

  • 相続登記
  • 相続人の調査
  • 相続財産の調査

相続登記は弁護士にもできますが、登記の専門家である司法書士に依頼するのが一般的です。

司法書士は、法的解決が必要な相続争いや相続税申告などを除く相続登記を得意とし、相続登記業務に精通しています

もし相続トラブルがないのであれば、費用を削減できる司法書士に依頼するのがおすすめです。

司法書士に依頼するデメリット

相続登記を司法書士に依頼するデメリットは、相続トラブルが起きたときに法的に解決できないことです

相続争いが途中で起きた場合、司法書士から弁護士に業務を途中から引き継ぐことができず、最初からの依頼になるため費用がかさみます。

相続争いになる可能性があるなら最初から弁護士に依頼することをおすすめいたします。

相続登記を自分で申請する場合の費用

相続登記を自分で申請する場合、相続する不動産が登記済みか未登記かによって費用が異なります。それぞれ解説します。

登記済みの場合

相続する不動産が登記済みの場合は、所有権移転登記の手続きをします

所有権移転登記を自分で申請する場合にかかる費用は「必要書類の収集費用」と「登録免許税」の2つです。

必要書類の収集費用

相続登記では戸籍謄本など様々な書類を収集して提出しなくてはいけません。

これらの書類は市区町村の窓口で発行されており、手数料が発生します。

以下に相続登記の際に必要となりうる書類名と手数料目安をまとめました。

・戸籍謄本:1通450円

・除籍謄本:1通750円

・改製原戸籍謄本:1通750円

・戸籍の附票の写し:1通300円

・住民票の写し:1通200〜300円 ※

・印鑑証明書:1通200〜300円 ※

・固定資産評価証明書 1通200~400円※

※自治体により金額は異なります

また、必要書類は各書類1通ずつという訳ではありません。

例えば、被相続人の戸籍謄本は出生から死亡まで全ての戸籍謄本が必要です。そのため、転校や転勤などで転籍を繰り返している場合は、遡ってそのすべての除籍謄本や附票までも取得しなければならず、手間と労力がかかるケースもあります。

相続人については、不動産を取得しない相続人も含めた全員の戸籍謄本が必要になるため、相続人が多い場合は、さらに書類の数は増えます

また、代襲相続や数次相続の場合は戸籍謄本だけでも数十通になることもあり、費用はかさみます。

・登録免許税

また所有権移転登記の申請前には、登録免許税を納めることになりますが、この場合は「固定資産税評価額×税率0.4%」で計算します。ただし、ここで注意すべきは登記原因が遺贈の場合など、登記原因によって税率が変わる点です

評価額が1,000万円であれば、登録免許税は4万円です。

未登記の場合

相続する不動産が未登記だった場合は、建物表題登記が完了してから所有権保存登記の申請をする流れになります。

各登記を自分で申請する際にかかる費用を解説します。

・建物表題登記

建物表題登記のかかる費用は以下のとおりです。

相続登記で共通することは、被相続人と相続人の戸籍謄本等が必要だということです。

項目内容費用
登記情報の収集費登記事項証明書や公図などを法務局で取得する1,000〜3,000円
必要書類の収集費戸籍謄本等、印鑑証明書など場合により異なる
交通費、郵送費書類収集のための交通費や郵送請求費場合により異なる

建物表題登記を自分で申請する場合は、建築図面を基に各階平面図、建物図面を作成して提出します。

土地家屋調査士に依頼すると平均10万円ほどの報酬が必要ですが、建築図面がない場合は図面の作成から依頼する必要があり、それ以上の費用がかかるケースもあります

節約したい場合は自分での申請を検討しましょう。

・所有権保存登記

建物表題登記が完了してから所有権保存登記の申請ができます。 

この登記にかかる費用は、登録免許税と必要書類の収集費用のみです。

登録免許税は、相続による所有権移転登記と同様に「固定資産税評価額×税率0.4%」で求めます。

また、必要になる書類は相続による表題登記と同じく、被相続人と相続人の戸籍謄本等が必要です。

費用については、被相続人の転籍や相続人数によるため一概には言えません。ただし、表題登記申請をする際に、原本還付請求を行うことで原本書類が返却されるため、流用することは可能です。登記申請と同時にしかできないため、原本還付請求は忘れずに行いましょう

住宅家屋証明書による、登録免許税の減免措置については条件に該当しないため適用はされません。

所有権保存登記を司法書士に依頼する場合は3〜5万円かかってしまうため、予算と相談して決めましょう。

相続登記費用を安く抑えるための節約術

自分で登記申請する

登記費用は主に「①登録免許税」「②書類収集のための費用」「③専門家への報酬」となりますが、自分で申請する場合も①と②は削減できません。

つまり削減できるのは「③専門家への報酬」ということになります

司法書士、弁護士、土地家屋調査士の報酬は、自分で申請することを思えばいずれも安いとは言えません。

時間や労力をかけても節約できる額は大きいため、自分で申請することに価値を感じる方も多いのではないでしょうか。

費用の安い専門家を探す

弁護士も司法書士も報酬額は自由化されていますので、高額な事務所もあれば比較的低額な事務所もあるはずです。

司法書士事務所の中には所有権移転登記を2万円程度で代行していたり、戸籍収集を数に関係なく定額報酬で請負ったりと比較的低額でサービスを提供している事務所もあります

相続登記にかかる費用が低額な専門家を探すのも1つの手段だと言えるでしょう。

まとめ

今回は、相続登記の費用相場について解説しました。

相続登記の費用は、自分で申請する場合と弁護士や司法書士に依頼する場合で、費用が大きく異なります

相続登記を自分で申請する場合は、登録免許税の計算や譲渡所得、取得費についても知っておかなければいけません。

相続登記費用を安く抑えるために、知識を身につけていきましょう。

どうしても費用を抑えたいという人には専門家の支援を受けながら自分で申請できるサービスもあります。「住Myの建物登記自己申請」では適切なアドバイスを受けながら、無理なく建物登記ができるサービスです。

タイトルとURLをコピーしました