自分で申請する滅失登記のやり方を徹底解説!解体から手続き、費用など

滅失登記

建物を解体もしくは火災や地震で失ってしまった場合、管轄の法務局へ建物がなくなったことを伝えなくてはなりません。これが滅失登記です。滅失登記は法律で定められた義務のため、必ず申請しなくてはなりませんが、具体的な方法について把握している方は少ないのではないでしょうか。そこで今回は自分で滅失登記を申請する方法についてお伝えします。近々建物の解体を検討している所有者の方はぜひ、参考にしてください。

滅失登記とは

滅失登記とは、登記されている不動産の所有者が建物を解体したり、火災や自然災害によって建物がなくなったりした際に行われる登記です。

滅失登記は、不動産登記と同様に土地と建物の両方を行いますが、不動産登記とは異なる点もあるのでそれぞれについての概要を把握しておく必要があります。具体的には次のとおりです。

建物の滅失登記

建物の滅失登記は、不動産登記法第五十七条に基づき、建物があったことを登記簿上から抹消する手続きです。滅失登記を怠ると、建物に関する権利関係が不明瞭なままとなり、債権者とのトラブルや保険金請求の問題が生じる可能性があります。

【債権者】とは、不動産などの財産に対して、抵当権を設定した時の抵当権者を指しますが登記簿上では、【権利者】を指します。

ちなみに担保を提供した者は【債務者】または【抵当権設定者】といいます。

登記に関していいますと、抵当権がついていても滅失登記はでき、滅失登記することで登記簿からも建物が存在しなくなりますので、建物に対する抵当権は消滅します。

しかしながら、民法【一三七条第二号 担保の消滅】にあたり、債権者は弁済期限を待たずに返済を求めることが可能になるため、他の担保や保証人を立てる必要があるなどトラブルが予想できます。

また、債権者が存在している状態で滅失登記を怠った場合、建物は存在しませんが登記簿には建物が存在しているため、抵当権は維持されます。

所有者が土地を売却しようとしても登記簿上建物は存在し抵当権も残っているため売却できなかったり、他の抵当権を設定できなくなるリスクもあります。それ以外にも、滅失登記を怠ると、法律違反となり、過料が科される可能性があるので注意が必要です

土地の滅失登記

一方、土地の滅失登記は建物の滅失登記とは異なり、非常に稀なケースでのみ必要になります。通常、土地は物理的な形態の変化が少ないため、滅失登記を行う必要性はほとんどありません。

しかし、一部の特殊なケースでは土地の滅失登記が必要となります。例えば、海岸線の土地で海面上昇により土地が海の底に永続的に沈んでしまった場合や、大地震や山崩れによって登記簿の土地原型がなくなった場合などです。このような極めてまれな事態が発生した場合には、土地の滅失登記を申請する必要があります。(不動産登記法第四十二条

通常の建物の解体や自然災害による倒壊などでは、土地自体が消失することはありません。そのため、建物の滅失登記を行うことで十分な場合がほとんどです

滅失登記の重要性

滅失登記を行わずに建物がなくなったままにしておくと、さまざまな問題が発生する可能性があります。具体的には建物が登記簿上に残ったままだと、その建物に関する権利関係が不明瞭となる点です。これは不動産トラブルの原因となり、所有者や関係者にとって大きなリスクとなります。

例えば、建物所有者が抵当権を設定していた場合、建物が存在しない状態でも登記簿上に残っていると抵当権は消滅しません。このため、債務者が土地の売却や再建築などの取引において銀行や信販会社とのトラブルが生じる可能性が高まるでしょう。債権者は自身の権益を優先して処理を行えるため、債務者は不動産の売却や担保権の設定に制約を受けることになります。

ほかにも、地震や火災などで建物がなくなった場合、滅失登記をしなければ、建物は登記簿上存在していることになるため、保険金の支払いを拒否される可能性もあるでしょう。固定資産税などにも影響します。

また、滅失登記は不動産登記法に基づく法的な義務です。登記を怠った場合は不動産登記法第百六十四条により、10万円以下の過料が科される可能性があります。法律違反になるだけでなく、不動産トラブルや保険の問題を回避するためにも、建物の滅失登記や土地の滅失登記は適切なタイミングで行うことが重要です。

参照:e-GOV法令検索(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=416AC0000000123)

滅失登記は解体工事完了から一月以内に行う

建物は建てた時だけではなく、解体した時もやるべきことが多く、登記申請はつい後回しにしてしまいがちです。しかし、滅失登記の申請は、不動産登記法第五十七条において建物の滅失から一月以内に行わなくてはならないというルールがあります

これを越えてしまうと、前述したように10万円以下の過料が科される可能性があるため、期限内での申請が必要です。

滅失登記の申請者

滅失登記は誰でもできるかといえばそうではありません。基本的に滅失登記の申請ができるのは、建物の所有権を保有する人、もしくは建物の相続人です。

所有権保有者

滅失登記申請における建物の所有権保有者とは、建物が解体された時にその建物の所有権を保有している人を指します

ただし、所有権保有者が所有権を持ったまま行方不明で連絡が取れない場合は、利害関係人または検察官が家庭裁判所に申し立てをして「不在者財産管理人」を選任することで、滅失登記申請の委任が可能です。

また、行方不明になった所有権保有者が家族や親族の場合、その家族や親族が保有者の代わりに、建物滅失登記の【申出】ができます。

相続者

相続者とは、所有権保有者が亡くなった際にその建物を相続した人です。一人で相続した場合は、その人が滅失登記申請を行います。また、複数人で相続した場合、申請はそのうちの1人で申請ができます。

なお、亡くなった人が遺言書を残しておらず、相続人も複数いる場合は、相続人同士で遺産分割協議を行い、そのなかで、建物を相続した人が申請します

自分で滅失登記申請を行う方法

では、建物の所有権保有者もしくは相続者が自分で滅失登記を行う方法について解説します。なお、自分で登記申請する際の費用相場は、必要書類の取得にかかる費用に加え、交通費と書類のコピー代で1,000~3,000円程度です。

申請する時期

滅失登記の申請時期は、前述したように、土地の申請は不動産登記法第四十二条、建物の申請は不動産登記法五十七条に基づき、なくなってから一月以内です。これは解体した場合でも地震や火事で失った場合でも変わりません

必要な書類を集める

土地の滅失登記はほとんどありませんので、建物の滅失登記について説明します。

手続きには、以下の必要書類と情報が必要です。滅失登記は、不動産登記の一つになりますので法務局に申請します。

登記申請書

滅失登記の目的や申請者の基本情報を記載する書類です。添付情報とは、申請書以外に添付する書類の名前を記載する欄で、建物滅失証明書や印鑑証明書などを記載します。

建物滅失証明書

解体業者が作成する書類で、建物の解体が行われたことを証明します。記載事項には建物の所在地や滅失の理由が含まれます。

位置図(現地案内地図)

解体された建物の存在場所を示す地図です。法務官が現地調査に行く際に参考にされるため、住宅地図のコピーがなければ周囲を含めたグーグルマップ等のコピーに目印をつけ添付します。

解体業者の証明書と印鑑証明書

解体業者が提供する書類で、建物滅失証明書に添付します。解体業者の詳細情報や照会が可能な公的書類を使用します。

登記事項証明書

解体された建物が登記されていたことを証明する書類です。法務局にて有償で取得します。

原本還付請求書

解体業者から受け取った書類の返却を求められた場合に作成する書類です。簡単なフォーマットで、各書類のコピーを申請と同時に提出します。後日請求はできません。

登記申請書や位置図のフォーマットは特に決まっていないため、自作も可能ですが、法務局のWebサイトに用意されたフォーマットを利用するのがおすすめです

【相続時の滅失登記】の場合は、次の書類も用意しなくてはなりません。

所有者の戸籍謄本、除籍謄本、戸籍の附票  

所有者が亡くなったことと相続人を明確にする証明書として、亡くなった人に配偶者や婚姻していない子がいる場合は【戸籍謄本】、配偶者も子もいない場合は【除籍謄本】が必要です。戸籍に関する謄本取得は、本籍地の役所になります。

不動産の所有者は「登記簿記載の住所に住む、この名前の人である」、つまり住所と氏名で判断されます。亡くなった方が、登記簿記載の住所から複数回転居していた場合は、前述のことから戸籍には住所情報が記載されないため戸籍の附票が必要です

申請者の戸籍謄本

相続人が申請することが原則です。亡くなった所有者の戸籍謄本や除籍謄本に申請者が記載されていれば用意する必要はありません

申請のやり方

登記申請に必要な書類を集めたら、次は下記の順番で申請を進めていきます。

管轄法務局の確認

解体した建物がある住所を管轄する法務局を確認します。

登記簿で登記有無の確認

管轄法務局で、解体した建物の所有者として誰が登記されているか、すでに滅失登記が行われていないかを確認します。

申請書類の提出

必要書類をまとめて法務局へ持参もしくは郵送で提出します。

登記完了証の受領

書類に不備がなく、申請内容にも問題がなければ滅失登記が承認され、登記完了証を受領できます。

自分で滅失登記の申請が難しい場合

仕事や家庭の都合、解体した建物から離れた場所に住んでいるなどの理由から自分で滅失登記の申請を行うのが難しい場合は、別の方法があります。それは、土地家屋調査士へ依頼するもしくは、登記申請支援サービスを活用する方法です。ここでは、それぞれの方法について解説します。

土地家屋調査士への依頼

土地家屋調査士は、不動産の登記に関する調査や測量を行う専門家で、滅失登記の場合も土地家屋調査士に依頼します。具体的な流れは次のとおりです。

  1. 土地家屋調査士への依頼

土地家屋調査士は現場確認が必要のため、解体したい建物近辺の調査士を、土地家屋調査士会のWebサイトもしくは電話帳や知り合いの紹介などを利用して見つけて依頼します。

  1. 必要書類を土地家屋調査士に提出

土地家屋調査士に依頼する場合も必要な書類は自身で用意して提出します。また、調査士に申請を委任するための委任状等を渡します。

  1. 代理申請の実施

土地家屋調査士が所有権保有者もしくは相続人に代わりに申請手続きを行います。

  1. 登記完了証の受領

申請が完了後、登記完了証が発行され、土地家屋調査士から受け取れば手続きは完了です。

手続きには通常1〜2週間程度かかるため、解体が確定したら早めに依頼するようにしましょう。依頼にかかる費用は一般的には約4〜5万円程度です。

自身で申請するのに比べかなり高額となりますが、面倒な手続きの手間は軽減されるため、解体後で忙しくて手が空かない場合は依頼したほうが効率的だといえます

登記申請支援サービスの活用

自分で登記申請したいがやり方がわからないといった場合には、登記申請支援サービスの活用をおすすめします。

登記申請支援サービスとは、必要書類の集め方がわからない、図面の作成が難しい、申請までに時間がかかるといった課題を解消してスムーズな登記本人申請を支援するサービスです。

節約しつつ手間のかかる面倒な部分について支援を依頼できるため、自分でもスムーズな申請を行えます。

まとめ

不動産の所有者が建物を解体したり、火災や自然災害によって建物がなくなったりした際に行われる滅失登記。申請自体は必要書類さえ集めてしまえば、申請書の記載自体はそれほど難しいものではありません。それは委任をする場合でも同様です

ただ、建物を解体した場合、さまざまな雑事が重なることもあり、一月以内という時間制限に間に合わせるのが難しいケースも少なくありません。

建物の登記は所有者がすることを不動産登記法では原則としています。そのための支援サービスもあります。建物登記支援センターの「住Myの建物登記自己申請」は、専門家に依頼するよりも安価で、手間がかかる書類作成の支援をうけることができるため簡単に登記申請が自分でできます。

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